Thesis

終末期に、点滴は投与しているorしていない? もしするなら、どのくらいの量を投与する? 重要な臨床判断の「軸」となる、貴重な論文のご紹介です。

終末期に、点滴は投与しているorしていない? もしするなら、どのくらいの量を投与する? 重要な臨床判断の「軸」となる、貴重な論文のご紹介です。

Cancer . 2022 Apr 15;128(8):1699-1708.

Chien-Yi Wu 1 2, Ping-Jen Chen 1 3 4, Shao-Yi Cheng 5, Sang-Yeon Suh 6 7, Hsien-Liang Huang 5, Wen-Yuan Lin 8 9, Yusuke Hiratsuka 10, Sun-Hyun Kim 11, Takashi Yamaguchi 12, Tatsuya Morita 13, Satoru Tsuneto 14, Masanori Mori 13

 終末期に点滴(補液)を投与するのかしないのか? もし行うならどのくらいの量を投与するのか? については、見解が定まっていません。多くの方のご意見を聞くと点滴については感覚的に判断されている方が多いようですが、管理人は、”あえて”エビデンスを軸に判断されているようです。実は終末期の点滴については、森田達也先生・森雅紀先生ら日本からも多くの先生方が参加され、比較的最近の臨床研究があります。この研究の特筆すべき点は「(日本人も含めた)東アジア人を対象にしている」点で、(大柄な方が多い)欧米人を対象とした研究よりも実臨床に近いと予想されます。管理人はこの論文に沿って1日250〜500mLの補液を軸として、腹水・胸水・下腿浮腫などの体液貯留が過剰な場合は点滴をなしにするなど、その「軸」を調節する形で臨床判断をしています。この論文が出てから、管理人は終末期に点滴をしない方が良い・もしくはしてはいけないというドグマから解放されました。他の臨床行為もそうですが、エビデンスに基づいた軸がないと時間的・空間的に方針がブレることがあると思いますし、教育もしづらくなると感じます。 この研究の概要ですが、多国間前向き研究で、東アジア3か国の緩和ケア病棟(PCU)で、終末期がん患者の補液の投与量を250 mL刻みで分類し、「よい看取り(Quality of Dying; QOD)」との関連を解析しています。結果として「250–499 mL/日」の群が、AHなし群よりも有意にQODが高い(多変量調整オッズ比 2.251、95%CI 1.072–4.730、P=0.032)と報告しています。   

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